- 貧血
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貧血とは『末梢血液中のヘモグロビン濃度の低下』と定義されています。その原因としては血液の中の赤血球という細胞が破壊、喪失、産生の減少により絶対数が少なくなることが大半です。犬と猫の貧血は命に関わるものが多く、一口に貧血といっても様々な原因により発症します。その原因により使用する薬が全く異なるので、しっかりと原因を追究してから治療を行わなければなりません。代表的なものを以下に紹介します。
・免疫介在性溶血性貧血
免疫とは体内に侵入した異物に対して攻撃することにより身体を守るために働く最も重要な生体の防御システムのことです。その免疫が異常な働きをすることにより自分の体の中の赤血球という細胞を誤って破壊することにより重度の貧血が起こります。これが免疫介在性溶血性貧血です。これは原発性と二次性に分けられ原発性とは特に原因がなく突然の免疫異常により発生するもの、二次性とは薬物への曝露や腫瘍、感染などに続いて発生するものです。治療は原発性では免疫を抑える薬を用いた治療、二次性では原因の除去とともに免疫を抑える薬を使う場合もあります。
・ハインツ小体性貧血(タマネギ中毒)
犬にタマネギを食べさせてはいけないということは一般的になってきましたが、その理由までは知らない方が多いと思います。タマネギやニンニクに含まれる毒物(アリルプロピルジスルフィドなど)は赤血球内のヘモグロビンを酸化させて酸素と結合できなくなることと、赤血球表面の膜を酸化させて細胞の正常な形を維持できなくなりハインツ小体と呼ばれる構造物をつくり最終的には破壊されてしまいます。この毒物は熱にも強いのでタマネギに熱を通しても不活化しません。タマネギ発症には個人差が大きくタマネギを丸ごと一つ食べても発症しないこともあればすき焼きの汁を少しなめただけで発症することもあります。タマネギ以外にも人間用の風邪薬やナフタレンなどを摂取した場合にも発症します。治療は抗酸化剤の投与や輸液、輸血を行って体内から原因物質が排泄されるまで貧血を抑えていくことになります。
・バベシア症
バベシア症は赤血球に寄生する微生物であるバベシアにより引き起こされる溶血性貧血のことを指します。バベシアはマダニを介して感染するのでこの病気の予防にはマダニの予防をまず行わなければいけません。バベシア症になると激しい貧血、血小板(出血を止めるための細胞)の減少、発熱、黄疸などが起こります。治療は注射薬と飲み薬を使用しますが、いったんバベシアに寄生されると大半で生涯にわたりバベシアを体内に保有することになるので、マダニの予防は非常に重要になります。
この他にもワンちゃんや猫ちゃんの貧血の原因となる病気はたくさんあるので随時アップしていきます。